頭の中が忙しい

自閉症スペクトラムと付き合いながら今日も育児をがんばる日記

お母さんなんだから、外食は諦める?

夫が独身時代、お世話になっていた寮の管理人夫婦に会いに行った。
二人は現在は引退されて田舎暮らしを楽しんでいる。
結婚前から私も度々食事に招いてもらったり、二人が引退するときに引越しを手伝ったりと付き合いがあったのだけど、子供が生まれてからはご無沙汰してしまっていたので顔見せに行っておきたかったのだ。

飛行機の距離ということで、前泊をした。その夜、久しぶりに外食がしたいという私の要望に応えて夫が美味しいお店を調べてくれていた。そこは屋台風の焼鳥店で、私が大好きだったお店に雰囲気もよく似ていた。料理の味もとても美味しかった。

だけど、つかまり立ちをし、目に入るものはなんでも手にしたがる子供を連れての外食はなかなかしんどいものがあった。狭い店内で自由にあそばせるわけにもいかず、おんぶをして食事をすることにした。だけど、3分と持たずグズグズ泣き始めた。

その度に立ち上がって揺すったりあやしたり。店員さんも他のお客さんも優しくて「何ヶ月?」「かわいいね」なんて声をかけてくれたけど、申し訳なくて「うるさくしてすみません。」と平謝りだった。結局最初に頼んだ3品を大急ぎで食べて帰った。

外食をするとしたらファミレスとか、回転寿しとか、ファミリー向けのお店じゃないと楽しめないんだな…と痛感した。

居酒屋なんて行こうと思ったら、夫に子供を見てもらって行くしかないけれど、転勤先の土地にはママ友しかいないからそれもなかなか難しい。職場の人とたまに飲みに行ける夫が羨ましいなぁなんて少し寂しくなった。

それに、子供を産んでからの私は外出するときは真っ先に子供連れでも大丈夫かということが頭をよぎるのに対し、夫は食べたい物やお店の雰囲気を第一条件でお店を決めた。そんなところに子供のことで頭がいっぱいな私との温度差を感じたりもした。

自分がどんどん小さな世界に閉じこめられていく感じがした。

翌日、管理人夫婦と再会した。二人は行きつけの焼肉屋さんに是非私たちを連れて行きたいと言って案内してくれた。通されたお店は真ん中に焼き網があって足元が掘りごたつになっていて、子供が火傷したり落ちたりしないか見張っていないと…と気が重くなった。

だけど、そこは流石に子育て経験者、夫婦はかわるがわる子供の相手をしてくれ、私が子供の世話をしている間は、手際よく肉を注文し焼いてくれたのでスムーズに食べることができた。自分のペースで食事ができるのが本当に久しぶりでありがたかった。

普段二人で生活している老夫婦にとっても、小さな子供は新鮮だったようでちょっとした仕草にもいちいち目を細めて可愛がってくれた。

他人に可愛がられる我が子を見ていると、あぁなんて可愛いんだろう、という気持ちが自然と湧いてきた。

老夫婦とは、夫の仕事の話、二人が若い頃の育児の話、田舎暮らしでみつけた美味しいお店の話、といろいろな話題に花が咲いた。

他人と子育て以外の話ができたのも久しぶりだった。この数ヶ月使っていなかった脳の部分を久しぶりに動かせた感じがした。

今まで私は、自分がどう変われば子育てが上手くいくか、とか、夫にどう説明したら子育ての大変さをわかってもらえるか、という考えに凝り固まって行き詰まりを感じていたような気がする。

だけど、他人にも子供を可愛がってもらうことで、自分のリフレッシュになるし、子供が可愛いという気持ちまで蘇ってくるんだと学んだ。

当初は「親孝行」のつもりで子供を連れて二人に会いに行ったけれど、こちらにとってもいい時間になった。
そしてやっぱり、子育ては1人で抱え込むものじゃない、と思った経験だった。「お母さんなんだから」と勝手にいろんな事を我慢して、諦めて、夫がわかってくれないと拗ねる必要なんてなかったんだや、と気持ちが軽くなった。